見たところ彼は一人だった。
どうしてこんな場所で会うの?




まさかの再会に動けないままで見ていた。




すると彼が手に持っていたタバコを消して、こちらに歩いてくる。




慌てて顔を逸らして、相田さんに「早く行きましょ」と言った。




なのに相田さんは動かずに向かってくる彼を見ている。





「相田さん…?」
『由梨、どうしてここに?』




私が相田さんに声をかけたのと、彼が私たちの元へやって来て声をかけてきたのはほぼ同時だった。




背中に添えられてた相田さんの手がピクリと動いて、それにつられて私の背も心なしかまっすぐになった。




「それは私のセリフよ。どうして貴方がここに?」




聞かれたことには答えずに質問すると、彼は少し黙る。




『食事に来てたんだよ。食べたら一服したくて…』
「ーー私たちも食事に来たのよ」




食後だと聞いてホッとした。同じ店で顔を合わせてたら食事どころじゃなかった。