トイレの中にはパウダールームと称した鏡台と椅子が設置されていて、備品としてあぶらとり紙やコットン、綿棒が置かれていた。




さすが一流ホテルのトイレね。




せっかくだからありがたくそれらの備品を使わせてもらい、過度にならない程度の化粧直しを施す。




トイレを出てフロントを横切り、ラウンジに座る部長を確認したところで、





「あ」
『あ』





お互い、短く言葉を発してそのまま固まってしまった。





『ーーお久しぶりですね。ここで会うとは、思いませんでした』





微笑む姿に、胸がきゅうっと鳴る。

まるで会えて嬉しいと言ってるみたい。

ううん、“嬉しいみたい”じゃなくて“嬉しい”んだ。