『由梨、俺バイト終わったんだけど』




「お、お疲れ様?」




・・・何怒っているの?




ワケがわからずに首を傾げると、今度は私の手を引き出口へと向かう。




『帰るぞ』




「え!?ちょ、待って、どうしたのよっ」




半ば強引に出口まで引っ張られて、足をもつれさせながら連れてかれた。




ドアを通り抜ける寸前で、何とか振り返り、カウンターを見ると、呆気に取られてる彼と一瞬だけ目が合って。




「あのっ、」




話しかけようとした私の言葉は、無常にも閉じる扉で遮られて、彼に届くことはなかった。




そのまま、目の前に客待ちをしていたタクシーに強引に押し込まれ、文句を言おうとしたら義彦までが乗ってきて、家の住所を運転手に告げた。




すぐに走り出したタクシーの中で、ようやく私は口を開いた。




「どうしたのよ。何でこんな急に店から連れ出したの。私、お会計もまだだったのよ?」




無銭飲食で捕まったら洒落にならないんだから。




『金は俺が立て替えて払っておいたよ。っつうか由梨、隙がありすぎで見てらんなかったんだけど』




「……はぁ?」




義彦の言葉に間抜けな声が出てしまった。