『自業自得、なんです』




カウンターテーブルにおいてあった、琥珀色のお酒の入ってるグラスを伏し目がちに見つめながら呟く。




「自業自得?」




どういう意味なのか少し考え、その言葉だけでは何も思いつかなくて、オウム返しに聞き返した。





『彼女が僕に好意を持っていりたのはなんとなく気付いていたのに、僕はずっと仕事を優先してたんです。
彼女は僕の部下でしたし、彼女の良さは僕しか知らないって鷹をくくっていたんです。


だけど彼女に好意を抱いていたのは僕だけじゃなかった。

彼女の良さに気付いたのは彼も同じだった』




「彼?同じ職場の方・・・だったんですか?」




『部署の違う、入社して2~3年のやつでした。彼はあっという間に彼女の心に入り込んでいった。

焦った僕は彼より先に彼女に交際を申し込んで、半ば強引にOKしてもらった。

だけど・・・遅かった』



遅かった、というのは、きっと告白のタイミング。
その彼女の心の中にはもう、この人ではない、別の人で一杯になっていたんだ。



『もし、もっと早くに・・・、彼が彼女の前に現れる前に、僕が交際を申し込んでいたら。

今頃ふたりは幸せだったのかもしれない、そう悔やんだよ』