「あの、ここにはよくおいでになるんですか?」




『たまに』




「じゃあ、このハンカチ洗って返します。洗ったハンカチはここの店員に渡しておきますので。ファンデーション付きのハンカチなんて持って帰ったら、誤解されちゃいますよ」



洗って義彦に渡して、返してもらうようにお願いしよう。




『誤解するような相手は今のところいないのでお気になさらずに』



「いないんですか?」



そう言ってしまい、慌てて口に手を当てる。




「ごめんなさい、てっきりいるものだと・・・」





だってこのハンカチ、とても丁寧にアイロンがけされてるし、何より、この人自身がモテそうだって思ったからつい・・・。



『結婚を考えてた女性に振られてから独り身です』



結婚。



そこまで本気だった女性がいたってことだ。



「どうしてあなたのような素敵な人を振ったのかしら」



呟くように言った言葉は、本心だった。



出会ってまだ小一時間も経っていないけど、この人が、人間として、男性としても素敵な人だと十分思ったから。