泣いて、泣いて、泣いて。



胸につかえてたモヤモヤした気持ちが消えていた。
まるで涙と一緒に流れ落ちたみたい。




グスッと鼻を啜りながら彼の胸元から少し顔を離す。



ああ。やってしまった。




彼の黒いスーツの胸元は私のファンデーションや、涙などで酷く汚れてしまっていた。





「すみません、スーツ汚してしまったみたいです」




そう言った自分の声の鼻声加減にたまらなく恥ずかしい気持ちになる。





顔を伏せたまま体と椅子の背もたれに挟んでおいたバッグからハンカチを取り出して、ハンカチでスーツをポンポンと叩く。




涙の水分は取れたけど、汚れはそんなんじゃ取れるわけもなくて。




『気にしないで。僕が勝手に押し付けたんだから』




そう言ってくれたことにこっそりと安心した。