『全部吐き出していいよ』




「え?」




隣を見たらふわり、頭を撫でられた。




優しく撫でる暖かい手の感触に戸惑いながら隣に座る名前も知らない男性を見つめる。




「あの、吐くほど酔ってない、」
『そうじゃなくて。気持ち、吐き出して』



気持ち、を?



『別れの経緯しか聞いてない。強がらずに君の分かれた恋人に対する気持ち、吐き出して?』




グラリと視界が揺れた。そっと目尻から頬にかけて親指で撫でられる。

それで、視界が揺れたのは、涙のせいだったんだと知る。




『話すのが辛いなら無理はしなくていい。でも話して楽になるなら、強がらずに言ってみて』




「ーっ」



『ゆっくりでいい。思ったことを思ったままに話してごらん』



「ほ、んとは、終わりになんて、したく・・・なかった」




誘われるように開く口からは、強がらない私の本心がスルリと出てきた。