「弥生、まだふて寝してんの?」

グラスの中のビールを見つめながら、美波さんが聞いてきた。

「そうみたいっすよ」

そう答えると、俺は美波さんの前につみれを出した。

弥生がへこんでも、『居酒屋ますだ』は今日も営業中である。

常連客には弥生は風邪をひいて寝込んでると言っているけれど、これがいつまで続くのかはよくわからない。

「あいつはへこむと、昔から面倒なヤツだった」

焼酎片手にレバーの焼き鳥を口に放り投げるのは、リコちゃんの旦那さんの梓さんである。

彼は『桜狩仏壇店』の1人息子で店主だ。

アラサー…とは思えないくらいのイケメンさんである。

元高校球児だったと言うこともあってか、体格は俺よりもいい。