[短編]お兄ちゃん、これからは

何故あたしの目が節穴などて言われなければならない。

あたしが言い返そうすると、お兄ちゃんはあたしの口に手をのせて、喋れないようにした。

「確かにキスはした。でも、あれは好きでやったんじゃない」

意味がわからない。

ならば何故、キスをしたと言うのだ。

「家の前で好きだって言われて、俺には好きな奴がいるから無理だって言ったんだよ。そしたらあっちが無理矢理キスしてきたんだよ」

「隙があった俺も悪いんだけどさ」と、ぼそぼそと言ってお兄ちゃんは自分の頭をがしがしと掻く。

お兄ちゃんに彼女はいなかった。

勘違いだった。

あたしの目からは自然と涙が流れた。

お兄ちゃんは苦笑を浮かべ、優しく涙を拭ってくれた。

「お兄ちゃん、彼女いないの?」

「いねーよ」

「本当に?」

「ああ」

お兄ちゃんはまた、あたしを抱き締めた。

今度はそっと、優しく抱き締めてくれた。

「ごめん、なさい。ごめんなさい」

あたしは何度も謝った。