［短編］お兄ちゃん、これからは

「は？」

「だから、もう来なくていいって言ったの」

聞き返すお兄ちゃんにあたしは少し大きく、強めに言った。

「なんで、急に、」

信じられないというようなお兄ちゃんの表情を無視して、あたしは出来るだけ冷静言う。

「お兄ちゃんにだっていろいろ用事とかあるでしょ。それにこれ以上、迷惑掛けらんないよ」

あたしがそう言えば、お兄ちゃんの瞳は怒りを帯びて、少し怖くなった。

「何度も言わせるな。迷惑じゃねぇって言ってんだろ」

いつもよりも低いその声はやっぱり怒りを帯びていて、あたしの身体は少し震えた。

「あたしが、」

部屋中にあたしの大きな声が響いた。

「あたしが、迷惑なの！」

彼女がいるのにあたしにばかり時間を費やしてほしくない。

あたしの所為でお兄ちゃんの幸せを潰したくない。

その一心であたしは思ってもいない言葉をお兄ちゃんに投げつけた。

お兄ちゃんは微動だもせず、あたしの前に座っていた。

あたしはお兄ちゃんの顔を見ることが出来ず、顔を俯かせた。

「そうかよ」

ぽつり、お兄ちゃんはそう言って立ち上がりあたしに背を向けた。