[短編]お兄ちゃん、これからは

今日は朝から身体の調子が悪い。

結局、昨日はお兄ちゃんは用事があったため、渋々といった感じで帰っていった。

疑いの瞳を持ったまま。

あんなお兄ちゃんは初めてだ。

普段のお兄ちゃんなら諦めたように苦笑を浮かべ、帰っていく。

何かしてしまっただろうか。

一晩、悩みに悩みすぎて身体の調子が悪い。

あたしは気分を変えるために窓を開けようとした。

けど、その手は止まってしまった。

「お兄ちゃんが、キス、してる」

後ろ姿でも、直ぐにわかる。

お兄ちゃんはあたしの知らない女性と、キスをしていた。

我に返ったあたしは直ぐにカーテンを閉めて布団の中に潜った。

心臓が早く脈打って、五月蝿い。

お兄ちゃんには、彼女がいた。

当然ではないか。

お兄ちゃんは優しくて、偶に意地悪だが、頼りになって、格好良い。

まさに、完璧な人なのだ。

そんな人に彼女がいない訳がない。

「よかった。告白、しなくて」

また、お兄ちゃんを困らせるところだった。