[短編]お兄ちゃん、これからは

お兄ちゃんはあたしの頭を撫でながら「なんでお前が謝るんだよ」と苦笑った。

「だって、あたし、お兄ちゃんのこと迷惑だって言った」

「言ったな」

「本当は、思って、ないもん」

「知ってるよ。どうせ、俺に彼女が出来たって勘違いして距離を置こうとしたんだろ」

泣きじゃくるあたしを、お兄ちゃんは小さい子供をあやすかのように優しく、優しく頭を撫でくれる。

「ごめんなさい、ごめんなさい」

「謝るな。俺だって悪いんだ」

ぎゅっと抱き締める力を強めて、お兄ちゃん言った。

これ以上は謝ってほしくない、そう身体で表してるように思えて、あたしは謝るのを止めた。

「お兄ちゃん、好き」

お兄ちゃんは一瞬身体を固まらせ、そして勢いよくあたしの顔を見た。

「もう一回、言って」

「好き。お兄ちゃんのことが好き。大好きなの」

お兄ちゃんは安心したような笑顔をして、また力強くあたしを抱き締めてくれた。

「俺も好き。大好き。愛してる」