窓から見る景色にはもう飽きてしまった。

家の周りは他の家に囲まれ変わることなんて決してない。

空は毎日見ている所為か同じようにしか見えない。

つまらない、つまらない。

早く、外に出たい。

いっそ、このままの姿で外に出ようかと考えているとドアから控えめなノックが聞こえた。

「どうぞー」

あたしがそう言えば、ドアは開かれ銀色という変わった髪をした男性がにかっと笑いながら「おっす」と言った。

その笑顔はあたしの荒んだ心を一瞬にして癒してくれた。

「おかえり、お兄ちゃん」

「ただいま」

お兄ちゃんは帰ってくると必ず頭を撫でてくれる。

今日も優しく割れ物を慈しむかのように撫でてくれた。

それがとても心地いい。

「調子はどうだ?」

「大丈夫だよ。これ以上は悪化もしないって」

「そりゃよかった」

お兄ちゃんは安心したようにひとつ、息をはいた。

「心配性だなぁ。それより、大学は?勉強ちゃんとしてる?」

「お前こそ心配性だな。大丈夫、ちゃんと勉強してるよ」

「ありがとな」とお兄ちゃんは言ってまた優しく撫でてくれた。