全てを悟ってしまった瞬間、あたしは無意識に、俯く小杉春流の身体を抱きしめていた。




「な、何して…!」



「アンタがそんな過去を背負っていたなんて。…気付いてあげられなくてゴメン―――!」




小杉春流の辛い気持ちが、あたしの心にどんどん伝わってくる。




「…俺が留年したのは、学力が足りなかった訳じゃねぇ。両親の居ない穴を必至に埋めていたら、出席日数が足りなくなったからだ」




小杉春流の両親は、会社の経営者。


両親が居なくなった事によって、小杉春流が会社を安定させなければならない。


自分に負担を掛けて、たくさんの辛い思いをしてきたんだね。




「今は、会社の経営は親戚がやってくれているから、お前は心配するな。前みたいには追い詰められていないから」




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