―――お兄ちゃんなんて言葉を、あたしの前で使わないで。
瑞兄はあたしにとって“お兄ちゃん”なんかじゃない。
アナタはあたしの―――
「未愛?」
「な…何?」
瑞兄の呼び掛けによって、あたしの思考はプツリと途切れた。
「みんな心配してるだろうから、そろそろ戻るぞ。此処に居過ぎて風邪を引いてもいけないしな」
「うん」
瑞兄は自分の上着をあたしに被せると、ホテルへの道を戻り始める。あたしも無言で瑞兄の後を追った。
…で、結局、何で瑞兄は怒っていたんだろう。
原因が分からないまま、今日も長い夜が始まる。
.

