「国友未愛」
「へ?」
「俺、帰るな」
状況を察した小杉は、あたしと瑞兄を一瞬だけ視界に入れた後、静かにこの場を去っていく。
小杉春流が居なくなって訪れる、二人きりの空間。
戸惑うあたしを落ち着かせる為か、瑞兄の手のひらが、あたしの背中を擦り始めた。
「俺っていう人間は、未愛を傷付けた上に泣かせて、本当にバカだ。これじゃ“お兄ちゃん”失格だよな」
「“お兄ちゃん”…?」
「ああ、“お兄ちゃん”だ」
瑞兄からハッキリと告げられた言葉は、現実を受け入れろと言われているみたいで、少し悲しくなる。
.
メニュー