明るく名前を呼びながら、瑞兄の服の裾をギュッと掴む。 ―――けど。 「…何?」 「えっ、瑞…にぃ…?」 冷たい声を発した瑞兄は、あたしの手を振り解く。そして、瞳に焼き付けてしまった。 …今まで見た事も無いくらいに不機嫌そうな、瑞兄の顔を。 「ど…どうした、の…?」 由羽先輩も、紅羽先輩も、少し先を歩いている小杉春流でさえも、あたし達の間に流れる不穏な空気に気付き、立ち止まっている。 振り解かれた指先が、怖いくらいに震えてしまう。 .