「さっき瑞希は、“どうして俺を庇ったんだ?”そう聞いてきたよな?」
「ああ」
「その答え、教えてやるよ。―――恩返し、だよ」
「は?」
瑞兄は戸惑っているようだけど、あたしにはピンと来てしまった。小杉春流の目を見ていると、アイツの考えている事が、手に取るように分かる。
きっと、自分の留年が決まった時に、必死になって抗議してくれた瑞兄を浮かべているんだ。
その身を削ってまで起こした行動を、小杉春流は“恩返し”と称して、瑞兄に返そうとしているんだと思う。
「大丈夫だ。俺が守ってやる。瑞希も、国友未愛も」
「小杉、春流…?」
意味深な言葉を耳にして、聞き返そうとした時だった。
―――生徒会室のドアが派手な音を奏でながら、勢い良く開いたのは。
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