ようやく真面目に取り合ってくれた事に嬉しくなりながらも、あたしは目をキラキラと輝かせる。
やっぱり女の子の好きな話といえば、恋バナに限るでしょ!と意気込むあたしを、小杉春流は軽く軽蔑した眼差しで見てきた。…ブン殴りたいわ。
「…俺、恋した事ねぇんだけど」
「…は?ってそれじゃ、話にならないじゃん!」
「お前は瑞希にキャーキャー言ってるけどさ。“好き”という感情が分かんねぇんだよ」
小杉春流の眉を顰める仕草からして、冗談では無く、本気で言っているという事が分かる。
「…きっといい人、見つかるよ。アンタでも」
「最後の“アンタでも”って所が気に食わないけど。まぁその言葉、ありがたく受け取っとくわ」
上から目線の言葉に、小杉春流のゴーイングマイウェイぶりを改めて実感した―――その瞬間、突然密室の部屋中に、無機質な音が響いた。
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