そうやってクールに言い放つ小杉春流は、あたしの事を明らかにあざけ笑っている。
言葉では表現する事の出来ない程のイライラを抱えたまま、あたしは小杉春流を睨み付けた。
「で…何で此処にアンタが居るの」
「何処かのアンポンタンがペンキを取って来るのが遅いからって、瑞希に探しに行けって言われたんだよ」
「み…瑞兄がっ!?」
先ほどのイライラは何処へやら。あたしの心は小杉春流を追い出して、瑞兄一色となっていた。
瑞兄が…あたしの心配をしてくれているなんて!
キラキラ目を輝かせるあたしをよそに、小杉春流はいつの間にか背を向けて歩き出していた。
「ちょ…ちょっと待ってよ!あたしも帰るから!」
あたしが後ろ姿の小杉春流を目指して、走り出した瞬間―――
大きな音と共に、資料室のドアが閉まった。
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