何も言わず、階段を駆け下る。
自分の足音だけが、何故かよく響く。
なんだか、虚しい。
ポツンと一人で階段を駆け下って、2階の踊り場のところで足を止める。
はぁ……。
大きく息を吐いた理由は2つ。
1つ目は階段を全速力で駆け下ったから。
2つ目は………
「2人で覗き見だなんて、趣味が悪いにも程があるんじゃない?」
そう言って、私は後ろを振り返る。
夕焼けで照らされた踊り場に、黒い大きな影が揺れた。
「知ってたの?剣」
悪びれた様子もなく、不服そうに口を尖らせる女子。
プラス、馬鹿。
「剣ちゃん、カッコよかったねぇー」
ニヤニヤと気持ち悪い笑顔を浮かべる馬鹿。
「また覗き見?もうちょっと、私にバレないようにすれば?」
私も負けじと相手を馬鹿にしたような、そんな笑みを浮かべた。
女子がまた、口を開く。
「剣怖ーい。そんなんだから、“つるぎ”なんだよ」


