「あーらら。剣ちゃん、またやっちゃったの?」
笑いながらも、軽く呆れているのが分かるような顔を、私に見せる千波。
「ゴメンナサイ」
「今の時期、暑いんだから……。剣ちゃんから頭ポンポンってされたら、熱中症と同じくらい、体温上がっちゃうんだから。分かってる?」
分かりません。
熱中症と同じくらいって、どういう事ですか。
「ほら、こんなに真っ赤。剣ちゃん、保健室!」
「えっ?」
「保健室に連れて行って!田崎さん、本当に熱中症かも」
千波が、田崎さんの額に手を当てている。
テキパキと近くに居た1年生に指示を出し、他の1年生は、体温計を持ってきたり、氷を持ってきたりしている。
「うん。37度4分。これから上がるかもしれないから」
「分かった。すぐに連れて行く」
「お願い」
熱中症と聞いて、慌てた私は、すぐに田崎さんを持ち上げ、急いで部室を出ようとする。
「剣ちゃん、お姫様抱っこ!」
「はあ?今そんな事……」
「いいから!」
しぶしぶ頷きながら、お姫様抱っこで田崎さんを持ち上げる。
「田崎ずるーい!」
「先輩、次私も!」
キャアキャアと高い声が聴こえるけれど、そんなのは無視。
私は袴のまま、部室を飛び出した。