紳士的なLady




「そういえば、剣。後で話すことって何?」

「えっ?」



覚えてるんだ。

いつもいつも忘れちゃうのに。




「あー……。何でもない。さっきはちょっと眠たかっただけ」

「嘘でしょ」




今日に限って鈴音は鋭い。エスパー?




「言ってくれないの?剣」

「言ったらまた思い出す」

「そんなに嫌な事だったの?」

「すっごく嫌な事なの」

「どんな事?」

「どんな事ってそれは……」




危ない。

口が滑りそうだった。


口を慌てて押さえると、鈴音は面白くなさそうに「チッ」と舌打ちをする。





「鈴音?私が言うの期待していたの?」

「いや……。上手くやったら喋ってくれないかなーって。あーあ。失敗」

「私がそんなに簡単に喋ると思う?」

「思わないけどさー。喋ってくれたって良いじゃん」




確かにね。


元はと言えば、私が言い出した事だけど。


自分でも言ってしまいたいのか、言いたくないのか、よく分からないのだ。




簡単な事だったら、笑い話で済ませていれたんだと思う。

でも、これは簡単な事じゃない。






わたしにとっては重要な事だ。