「剣の隣って、架月なんだねー」
興味無さそうに、髪をくるくるといじりながら、鈴音はそう言った。
「んー……。
あの人王子って言われるぐらいモテモテなんだよ。
知ってた?」
「今初めて聞いた」
「やっぱりね」と呟くと、鈴音は急に立ち上がって長々と喋り始めた。
「架月玲佳って、入学式の時に、この学校で1番綺麗な3年の先輩に告られたんだって。
でもその人の愛の告白を『無理』の一言で済ませたの。
それを聞いた他の2年・3年の先輩も架月の顔見て一発で惚れちゃって、告白されて振られるのが日常茶飯事だったんだよ」
「……笑い話?」
「少しは真面目に聞いたら!?」
鈴音は、ドンッと机を叩くと、腕組みをして顔を近づけさせる。
「剣、絶対にアイツになんか惚れないでね!!皆クールだとかそんな事言ってるけど、あれはただ単に冷たいだけなんだから!」
「……もしかして鈴音、架月に告った?」
その言葉を口にした瞬間、鈴音の大きな目がキッと細くなり、私を睨み付ける。
「そうよ!悪い?1年の時の事なんだから、もう今は全然関係無い!」
図星だったらしく、顔を真っ赤にさせてそっぽを向く。
「そっか」
ふふっと、笑いが零れた。
「剣馬鹿にしたでしょー!!」
「違う違う。鈴音も可愛いなーって思っただけ」
「何で今そんな事……!」
いつも私に振り払われているせいか、素直に言っただけなのに、またも顔を赤く染めていく。


