「つーるーぎー!!」
課外が終わった後だから眠たいのに、耳元で、しかも大声で私の名前を呼ぶ鈴音。
人が疲れてる時に限ってこうなんだから……。
「何?鈴音。私眠たいんだけど……」
「今日ね、席替えがあるんだって!」
……。
どうでもいい情報をわざわざどうもありがとう。鈴音。
「そうかそうか。それだけだよね?おやすみ」
そう言って私は頭を机に突っ伏す。
「剣ー!」
鈴音は怒ったような声で、再度私の名前を呼ぶ。
五月蝿い!
「何!?私は眠たいの!そんな席替え如きで大騒ぎしないの」
机をバンバンと叩く私の姿は、どれ程滑稽なのだろう。
「面白いじゃん席替えー。わくわくするじゃん」
それは鈴音だけでしょ。もう勝手にして。
「剣ちゃんも鈴音ちゃんも落ち着いて。ね?」
困っているようだけど、どことなく楽しんでいるような笑顔が私の目に飛び込む。
「もう千波助けてー!剣が相手してくれないー」
鈴音は隣に来た彼女、早川千波に頭を撫でてもらっている。
「よしよし。でもね、鈴音ちゃん。
剣ちゃん、きっと疲れてるんだよ。学校から家、遠いじゃない?
課外の後は休ませてあげよ?ね?」
おっとりとした雰囲気と口調で千波は話す。
千波は寛大だな。
毎日思うのだが、千波は心が広い。
その余裕、どこから出てきているの?


