「榊くん、ここ病院だって知ってるよね?」
パシらせておいて、その一言。
「や……。その……わ、悪い。つい……」
「いいよ、来てくれただけで」
榊の左手には大きな大きな花束。
絶対にコレはお見舞い用なんてものじゃない。
「綺麗だね、花」
少しだけ、手を伸ばしてそっと花に触れる。
オレンジ色のガーベラ。
花言葉は知らないけれど、
素敵だ。
「だろう?貴様が喜びそうなのを買ってきてやったんだからな!」
偉そうに笑う榊を見て、つられるように笑う。
「ありがとう」
真っ正面から、はっきりと。
榊に笑いかけた事なんて一度も無かったけれど、今だけは別。
「……花言葉を教えてやろう」
いつもとは違う、勝ち誇ったような顔で、ビシッとオレンジのガーベラを指差す。
「我慢強さ」
「痛みに我慢して試合に出て勝った満原。凄い奴だと思った。
俺はお前のこと、確かに好きだったが……。
恋愛感情とやらではないようだったな」
何だろう。
榊のくせに。
でも
「嬉しかったよ。ありがとう」
それだけ言うと、黙って病室から出て行ってしまった。
強い、強い榊。
きっといつかは私を置いて行ってしまうんだろう。