何でだろう。
すごく、痛い。
本当は、苦しかったのかもしれない。
本当は、悲しかったのかもしれない。
本当に、辛かった。
鞄を取ってくれたとき、「ありがとう」って言ったのに。
自分の気持ちがこもってなくて、嫌だった。
その場しのぎで物事を考える、私が嫌だった。
あのキスも。
壊れ物を扱うように、丁寧で、優しかった。
それに酔いしれそうになってしまったのも、事実だ。
なのに。
なのに私は、「傷つける事しか出来ない」と言って。
彼に、「最低な人間」と言って。
彼のキスに対して、「罰ゲーム」とか言って。
一番最低なのは、自分じゃないか。
だけど。
一番私にとって辛かったのは、あんな暴言を吐いた私に対して見せた、架月の顔だった。


