全体重を前に掛け、構えを直す。
素早く面を入れ、彼女に接近した。
「杉村さんが、私を挑発してきたからでしょう?」
周囲の人には聴こえない、静かな声。
面がね越しに見えるのは、明らかに不安の色が伺える杉村さんの瞳だけ。
「私、短気だからそういう挑発に乗りやすいの」
竹刀を払い、杉村さんとの距離を広げ、相手がどう出るか、じっくりと待つ。
「結果も勿論大事」
勝って、私も皆も喜ぶから。
次の大会に出て、他の選手とも対戦したい。
それに、杉村さんが、あんな事言うから。
千波が酷い目に遭ったから。
勝たなきゃならないって、思ったから。


