「そういえば、左手怪我してるのよね?階段で転んで」
口角を上げ、ニタリと笑う。
その笑みがとても不気味で。
歪んでいて。
怖くて。
思わず、後ずさってしまった。
そこを突かれたのか、胴を打たれそうになる。
慌ててそれを防いだのか、先端が胴を掠っただけだった。
「……ッ!」
ズキンと左手が痛む。
物理的な痛みが、杉村さんの言葉にプラスされ、精神的な痛みも増していく。
視界が潤み出す。
本当は、試合よりも皆の所に行きたいんだ。
駆けつけたいんだ。
でも、勝たなきゃ。
ここで、杉村さんに勝たないと、
私が、壊れてしまう。


