「はいッ!」
後輩の声が、広い広い館内に響き渡る。
持っていたタオルで涙を拭う子や、手で一生懸命止めている子たち。
彼女たちは、私の後輩だもの。
「それでこそ、私の後輩」
空元気かもしれない。
だけど。
こんな事でめそめそしてられない。
私は勝つんだ。絶対。
闘心を固めていたところで、顧問が止めにやって来た。
「満原!その左手じゃお前でもダメだ!!相手は覇龍の杉村だぞ!」
息を切らしながら、ビシィッと試合表を私の目の前に突きつける顧問。
やっぱり。
杉村さんは、決勝戦に勝ち上がってきてる。
「いえ、私出ます」
「ダメだダメだ!!いくらお前が強くても、その怪我が相手に知られたら……」
ごちゃごちゃ五月蝿い。
逆境に勝ってこそ、私じゃないか。
口を尖らせたまま、顧問を睨んでいた私を見兼ねたのか。
「行ってきなさい。剣」
柔らかい笑みを湛えたお母さんが、珍しく口を挟んだ。
「しかし満原さ……」
「剣が試合に出たいって言うなら、私、止めないわ。昔からそうだったもの。『逆境に勝ってこそ私だ』って」
……こんなお母さん、初めて見た。
何だか、いつもより迫力がある。
黙って頷く私。
ありがとう、お母さん。
こういう時に理解してくれるのって、すごく嬉しい。
娘である私に、真剣な眼差しで最後にこう言った。
「勝つんでしょ?」


