「んーんーんー!んんー!!」
塞がれたままの唇からは、何も言葉を発する事が出来ない。
「離れろ」と言いたくても、それは出来ない。
その言葉さえも、出ない。
私の反抗する声、とは程遠い唸り声が聞こえている筈なのに、彼の唇はまだ離れない。
ヤバイ。息苦しくなってきた……。
こういうのって、ドラマでよくあるパターンだ。
わざと長い時間キスをして、息をしようと口を開けた瞬間、舌が入って……。
絶対に嫌だ。
考えるだけでも、悪寒が襲ってくる。
好きでもない、こんな人間にファーストキスを奪われ、さらにその次の段階に行くだなんて、絶対にお断りだ。
私は呼吸が出来ない苦しさを我慢しながら、どうにか彼を振り払おうと、私の右足のつま先に込める。
そして。
いつまで経っても離れない、彼の左足のすねを思い切り蹴った。


