「俺、帰るな。剣もお疲れ」
剣夜兄は私にそう言った後、後ろに居る千波や後輩たちに軽く会釈して、外へ行こうとした。
そこで、足を止める。
真っ直ぐ妹である私の方……ではなく、千波に向かって歩いていく。
「千波ちゃんも、お疲れ様」
ぼそりと言って、頭を優しく撫でた。
「ありがとうございます」
嬉しそうにはにかむ千波。
あんな笑顔、最近見なかったのに。
私じゃ、そこまで笑わせる事が出来なかったのに。
何となく釈然としないが、千波が嬉しそうだからいいか。
でも、あの人はあんなに千波にデレデレしてたっけ?
まさか、もうデキてるんじゃ……。


