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「剣ちゃん……」
帰り支度をしていた私に、千波が声を掛けてきた。
「……一緒に、行ってもいい?」
ギュッと裾まで掴まれて、懇願するようなに、私をじっと見る。
断る訳ないのに。
「うん、行こっか」
にこりと笑うと、ホッとした顔の千波が目の前に居た。
武道場に行くまでの間、千波から全部話してもらった。
後ろから口を押さえられて、ブラウスとスカートを破られた事。
その男は携帯で千波の写真を撮り、誰かに送った後、電話を掛けていた事。
その電話の相手はどうも女であるらしい事。
これは、昨日杉村さんが言ってた事?
昨日の帰りに言われたすぐ後に、こんな事があるんだもの。
分かりやすい。
全部話して、また思い出してしまったのか、千波が歩く度に雫を落としていく。
目尻に溜まった涙を、ハンカチで拭ってやると、ぎゅううっと、抱き締められてしまった。