「満原?」
……。
………。
……?
「え?」
またぼんやりしていた……!
「何だよ……」
「えっ?いやっ、そのっ……ありがとう!!助かった!うん!」
動揺しているのがバレバレなのだが、今は、彼とこんなに距離が近すぎる事に焦ってしまっている。
さっきの私の愚かな所を見られてしまったせいでもあるが、彼にもう自分の愚かな所を見せたくない。
無駄なプライドでも、捨てられないのだ。
「……お前、何そんなに焦ってんだよ」
ズバリと言い当てられ、また頭にパチンと何かが破裂する。
もう嫌だ。
ここに居たら、私が可笑しくなりそう。
「ごめん……、私、帰るから……。鞄、ありがと……」
小さくそう呟いて、彼の顔を見ないようにして机から離れ――
られなかった。
若干5ミリ程上げた顔をいきなり固定され、顎を掴まれる。
は?
何のつもり?
そして
「満原」
低く、なんだか甘ったるい声で、耳元で名前を呼ばれた。


