小さく息を吐き、空を見上げる。


もう陽は沈みかけていた。



「じゃあ、そろそろ戻ろうかな」



早川が屋上の出口から、出ようとしたその時だった。







わずかに、あの重たい鉄のドアが動いたのだ。



ほんの、僅かに。




誰かが居るのだろうと、大して気にも留めなかった。






それが、間違いだった。








ドアが開いた瞬間、俺の目に映ったのは







白と黒の、和服。



袴のようなもの。






そこに居たのは


長い黒髪を、一つに結っている、







紛れも無い、満原だった。









*嫉妬コンチェルト*