やっと帰ってくれるの?! そんな淡い期待を抱いた私が馬鹿だった。 彼は、席から立ち上がると、真っ直ぐ、私の机の前まで歩み寄ってきた。 「えっ?」 思わず間の抜けた声が出てしまう。 その声が彼の耳に聞こえたのか、彼は私が彼を嫌いな理由の一つとして挙げている、人を馬鹿にしたような、冷たい視線を私に向けてきた。 「満原。お前さ、」 ゴクリと唾を飲む。 「金具が壊れてて、鞄が取れねーんだろ?」 ハッ、と思い切り人を馬鹿にしたように、彼は笑った。