――あれは私が4年生だった時。
偶然、私が階段の方へ歩き出した瞬間だった。
いきなり、誰とも分からない女子が真上から落ちてきたのだ。
その頃から無駄に身長が高く、「これはヤバイ」と察した私は、その女子を真下で受け止めた。
それからだ。
男と勘違いされたまま、その女子が卒業するまで「剣くん」と呼ばれ続けた。
階が違う教室に来ては、手を振られたり。
その女子の友達に紹介された挙句、抱きつかれたり。
正直に言うと、鬱陶しかった。
2つ上の6年生だと知った私が驚くのは言うまでもなく。
髪が短かった所為か、担任以外全員「満原くん」と呼ばれた。
担任が何度も「満原さんです。さ・ん!」と言い続けても、結局「満原くん」のまま、卒業までの日々を過ごした。


