妖士(ようし)

「そうでしたか・・・あのじゃじゃ馬娘は何かご無礼をしませんでしたか?」

後で幸は叱られるに違いないと思った初姫は首を振った。

「いいえ何も。むしろ助かったわ。」

「そうですか?ならよかった。」

険しい表情を崩した織り姫を彼女は白峰に似ていると思った。

優しそうな風貌をしているものの、厳しく、容赦無く叱り、それであって真に自分の事を思ってくれる。


懐かしそうに目を細める初姫を見て織り姫は不思議そうに口を開いた。

「どうかしましたか?」

「いいえ・・・ただ家の事を思い出しただけよ・・・」

静かに思い出に浸っている彼女を優しく見つめた織り姫はしばらくして問い掛けた。

「お一人になりたいですか?」

自分を気遣ってくれているのだろう。
でも思い出に浸るのはいつでもできる。

「ありがとう。続けて。」
「では・・・。初姫様はこの奥にある水晶の宮で毎日ご祈祷をなさらなければいけません。」

それも幸から聞いたことだ
「神と心を交わして神の御言葉を疾風様にお伝えするのです。全て・・・。」

「でも祈祷の仕方なんて分からないわ。」

「斎宮様から教えていただけます。」