「弘樹…?」


サエが唇を離し俺の頬に触れる。


「泣いてる…」


そう言われて、俺は初めて自分が涙を流している事に気付いた。



「ごめっ…サエ」



さっと身体を離した俺をサエは悲しそうに見つめる。



「弘樹…あの人が好きなんでしょ?」


「え?」


突然のサエの言葉に目を見開く。


「お兄さんの彼女だっけ?あの綺麗な人…」


「なん、で?」



一度しか会った事のないはずなのに、なぜサエに俺の気持ちを見抜かれたのか分からず困惑した。



そんな俺の様子にサエは切なそうな表情で微笑んだ。