「端から3年3組の渡辺波瑠斗、1組の坂下楽、同じく1組の辰巳澪、最後が5組の風間朝陽です」


エトーが簡単に俺たちの紹介をすませる。


校長室は、ドラマでよくあるようなでっかい机に黒いでかいイス。

そしてそこに座っている校長は、相変わらずハゲている。



「で、私に何か用があるみたいだが…」


1つ咳払いをした俺は1歩前に出ると言った。



「俺…あ、いや僕たちは軽音部を作ろうと思っています」


さっきまではあくまでも歓迎ムードをつくっていた校長の顔が一瞬にして険しいものに変わる。

俺はそれに気づいていないフリをして話をすすめた。



「先日、工藤先生にお願いして軽音部創設を会議に出してくれました。

ですが、それは却下されました。


そのことは知っています。

でも僕はどうしても、軽音部を作りたいのです。


吹奏楽部で成績を残しているこの学校で、

吹奏楽ではない、新しいジャンルの音楽が学校に流れれば、

もっと魅力的な学校になるんではないでしょうか」


我ながらすごいことを言っている、というのは分かっている。

でもなぜか口からそんな言葉がスラスラと出てきてしまったのだから仕方ないだろう。




「キミたちに…学校の魅力がどうこう、なんて言われたくない」


でも返ってきたのはこんな、校長の言葉だった。