「う、うめぇ…」
俺の左横で楽が呟く。
「カッコいい…」
右横で朝陽が呟く。
確かに、澪のドラムはうまかった。
確かに、澪のドラムはカッコ良かった。
もう、決まりだ。
澪は俺たちのバンドのドラマーだ。
コイツしか、いない。
澪は1曲叩き終えて呼吸を整えている。
「なあ、澪」
その声に反応して澪が振り向く。
「俺たちとバンド、やらないか」
「無理」
「なんで?」
確か、こんなやり取り、楽ともしたっけ。
なんて遠くない過去を思い出す。
「なんで、なんて聞かなくてもわかるでしょ?
朝陽も坂下もいるなら知ってるんでしょ?
あたしの過去のこと。」
「ああ、知ってるよ。
けど、俺はそんなこと、どうでもいい」
「ウソ。
ウソつき。
どうでもいい、なんて思ってないくせに。
本当は、あたしのこと、軽蔑してるくせに。」
俺をキッと睨む澪。
ああ、そういうことか、俺は気づいた。
「過去のことにこだわってんのは澪のほうだろ。
俺も楽も、朝陽も、ここにいる3人は
お前のこと、本当に仲間だって思ってる。
だから、俺たちと一緒に最高の音楽、奏でようぜ。
誰にもできない音、作ってやろうぜ。」


