「はっ?!おい!波瑠斗!」
そんな楽の声を無視して俺は構える。
うちに兄貴の電子ドラムがあるんだ。
決してうまくはないが、でもドラムもできる。
1度大きく息を吸い込むと俺は思い切りスティックを打ち付けた。
それからしばらく誰も口をきかなかった。
「…もう、いい。
……やめて!!」
澪の怒鳴り声が聞こえて俺は動かしていた手を止めた。
「あんた、下手くそ。
そんなドラムやってっちゃドラムが可哀そう。
どいて」
今度は澪がスティックを奪う。
そしてほぼ強制的にイスから俺をどかせ、自分が座る。
「いい?ドラムってこうやって鳴らすんだよ」
俺をチラッとみると、
1度目を閉じた澪は静かに、それでも力強く、ドラムをたたき始めた。


