「おかしいなぁ。
なんでだよ。
なんですんなり住所が手に入る?」
授業後。
楽と朝陽と3人で歩いていた。
「はあ?何言ってんだよ。
楽だって目の前で見てただろーが」
俺は住所の書かれた紙をヒラヒラさせる。
この住所、楽の担任に
『辰巳さんが学校に来れるように話がしたいんです』
って一言言ったらもらえたんだぜ?
簡単だろ?
「いや、けどさ。
今の時代、個人情報の…」
「もういいよ、聞き飽きた、それ」
俺と楽のやり取りを聞いて朝陽は笑っている。
なんて穏やかな時間なんだろう。
まだ会ったこともない辰巳澪。
彼女も、この仲間に加わってほしい。
いつだか忘れてしまった笑顔を、
取り戻してほしい。
人を、もう1度、信じられるようになってほしい。
いや、違うな。
俺たちが、もう1度人ってモノを信じられるようにしてみせる。


