「やめろよ、波瑠斗。
頭、上げてくれ」
エトーの言葉に素直に従う。
目の前のエトーは困ったように眉を下げて髪の毛をくしゃくしゃにする。
「お前の気持ちはよく分かった。
分かるんだが…でも俺にも立場ってもんがあるんだよ。
分かるか?波瑠斗」
「分かってる。
俺だってもう子どもじゃないんだ。
だからエトーにはマジで感謝してる。
上から目をつけられる可能性だってあるのに俺の夢に協力してくれて、
ホントに感謝してる。
たぶん、これからもいっぱい迷惑かけると思う。
だけど、信じてほしい。
俺が…いや、俺のバンドが学際のステージで歓声に包まれることを信じてほしい。
絶対に、俺はやり遂げてみせるから。
だから、お願いします。
授業後…ギター、弾かせてください!」
また頭を下げた。
するとはぁ…とため息が聞こえて次に聞こえてきたのは
「よし、分かった。
乗りかかった船だ。
俺が全部、面倒見てやる。
ただし、10分だけだからな」
そんな、エトーの優しい言葉だった。


