『別れた理由…

そうね、強いて言うなら私が弱いから、かな?』


「…え?」


『あのね、赤ちゃんができた、って分かった時、急に怖くなっちゃったの。


私が母親になる。

そんなこと、もっと未来のことだと思ってたから。


そしたらね、ユウとの結婚も怖くなっちゃって。

ユウにはなんの落ち度もないの。


ただ、私が怖がりだから。

私が臆病だったから。


だから、別れようって。

それしか考えられなかった。』


やっぱり、大人はよく分からない。

怖いなら、エトーに手を握っていてもらえばいいだけの話じゃないか。



『今でもユウのことは愛してる。

多分、死ぬまでユウのこと、忘れられないと思うの』


初めて偽りではなく、本気の『愛してる』を聞いた。


でも俺が思っていたのは、温かい『愛してる』だった。

だけど、今元カノさんが言った『愛してる』は切なすぎる。


胸がギュッと痛くなった。



「…間違ってると、思います」


『…え?』


人の迷いに答えはないと思う。

だけど、俺は違うと思った。


元カノさんの出した答えは、間違ってると思った。