「うっせーなあ。
いいだろ、今日くらい。
俺たちはついに夢を叶えたんだ」
「はあ?まだ叶ってねーだろ。
ステージで演奏できたその瞬間が、
夢を叶えた瞬間だぞ」
「分かってるよ、それくらい。
ともかく、俺たちはもう確実に夢を掴みかけてるんだ」
腹筋に力を入れて起き上った。
「もう、俺たちは駆け抜けるしかない。
学際まで、走って、走って、走りまくろう。
…燃え尽きる、その瞬間まで」
今までだって散々走ってきたけど。
ここで足を止めるワケにはいかないから。
最後まで、全力で。
「…なーにクサイセリフ、決めてんだよ。
なんかの歌詞みてーだな」
楽がクッとバカにしたように笑う。
「うっせ。
いいだろ、別に。」
恥ずかしくなって慌てて立ち上がる。
「ほら、やるぞ。
俺たちにもう時間は残されてないんだから」
と、言ってギターを手に取った。
みんなにふっと笑われたがそれでも素直に楽器の前につく。
「よし、行くぞ」
俺のギターの音が鳴ったとき。
「やっと役に立てた…」
そうエトーが呟いたことは
軽音部の誰も、気づかなかった


