「工藤先生、あたなにはプライドというものはないのですか?」
校長の言葉に思わず顔を上げ、思い切り睨んでしまった。
「プライド?」
「そうです。
軽音部のためにあなたはそこまでした。
いくら彼らの力になりたいからって土下座までしますか?普通」
「…なら俺は普通じゃないんでしょうね、きっと」
ふっと軽く笑う。
「それに、プライドなんて生徒のためなら喜んで捨てますよ。
こんなちっぽけなプライド、要りませんから。
俺は…アイツらの笑顔が見られれば。
それだけで、十分なんです」
きっと、俺はバカなんだろう。
ちっぽけでも、俺にだってプライドはあるんだ、やっぱり。
生徒のためなら喜んで捨てる。
この言葉はウソじゃない。
だけど、それでも俺の心は今にも折れそうで。
なんて脆いんだ、俺は。
「…分かりました。
もう1度、検討しましょう」
しばらくの沈黙の後、丸山先生がそう言って。
俺は立ちあがると
「失礼しました」
そう言って、校長室をあとにした。
きっと…俺の決意は無駄に思ったんだろう。
だって大人の『検討します』は
一応、の言葉であって、
検討なんてする気なんてサラサラないんだ。
俺だってだてに社会人をやっているワケじゃない。
それくらい、知ってんだから。
…ちくしょう。
やっぱり俺、アイツらのためになんもしてやれねーのかよ…っ!!
◆エトー目線 終◆