お互いの涙が落ち着いた頃、また来る事を約束してお母さんの部屋を後にした。
街灯の少ない田舎道。
遠くの駅だけが、ほんのりと明かりに包まれていた。
お母さんの部屋で見たのは、たくさんのすずらんの花だった。
小さな写真から、可愛い置物。
それに、部屋のじゅうたんまですずらんの柄。
幸せが訪れるように、ずっと願っていたんだね。
それに、ベッド横に飾られていたのは、青空に光る、虹の絵と。
小さい頃の、レオくんの写真。
私が見たことのない、満面の笑みだった。
レオくんが思い出だと思っていたものを、お母さんもまた、2人の思い出だと、あんなにたくさんのすずらんを揃えたんだよね。
素敵な親子だ。
「美羽」
突然、呼ばれた名前。
え? っと、驚きながら顔を上げた瞬間、街灯の光が遮られた。
温かさに包まれる。
……え?
レオ、くん……
「……美羽」
耳元で、レオくんの声。
「ありがとう」
「………」
ゆっくりと、離された体。
驚きのあまり、目と口を大きく開ける私。
「っぷ。 ぶっさいくな顔」