「おっはよ」
朝の通学路で見つけたのは、だるそうに丸まるレオくんの背中。
勢いよく叩きすぎたせいか、レオくんの体が前のめりになった。
だけど、すぐに体勢を整えたレオくん。
顔を私に向け、目を丸めている。
「プッ、何て顔してんのよ。いつものクールさが台なし」
口に手を当て吹き出すと、レオくんは私から顔をそらした。
沈黙が続く。
……やっぱり、このテンションはおかしいか。
これが私の精一杯なんだけどな。
明るくいかないと、壮吾と別れた意味がなくなるから。
泣かないって決めたんだから、笑わなきゃ。
辛いのは、きっと壮吾だって同じ――…。
「それがあんただな」
「……え?」
「そっちのほうがいい」
目を丸めてレオくんを見上げると。
フッと、目だけを私に向けてほほ笑んだ。
レオ、くん――…
トクンと、一瞬にして心が温かくなった。
「ちゃんと、話せたの?」
「うん。……結果的に、別れることになったんだけど」
そっか。 そう言葉を落とすレオくんの足元で、小石が転がった。
コロコロ頼りなく転がった小石は、電信柱にぶつかった。
「ごめん」
「何が?」
「せっかく、レオくんが贈ってくれたのに」
「………」
「すずらんの花。それなのに、ダメだった」
隣を歩いていたレオくんが、ピタリと立ち止まった。
何歩か歩いたところで、レオくんを振り返る。
「でも、完全に終わったわけじゃないんだろ?」
フワリと、風が吹いた。
レオくんの茶髪が、ユラユラ揺れる。
「前に進む為の、選択だろ?」
「………」
「あんた達なら、大丈夫だよ。また、元に戻れる」
「レオくん……」
「大丈夫」