壮吾は不思議。


見た目はこんなに悪ぶっているのに、遅刻を気にするなんて。


「ちゃんとつかまれよ」


自転車の後ろに横向きに座った私を、壮吾が振り返る。


やっぱり壮吾はキラキラと光っていて、眩しい笑みを浮かべていた。


眩しすぎる。


「違う」

「へっ?」


眉間にしわを寄せて壮吾を見上げる。

すると、壮吾の腰に遠慮がちに置いていた私の腕をグイっと引っ張って、


「落っこちたくなかったら、ここ握っとけ」


そう言って、自分のウエストにしっかり固定させた。


ドクンドクンドクン――…。


こんなに密着したら、この鼓動がバレてしまう。


こんなに緊張しているなんて、絶対にまたからかわれる。


「行くぞ」

「う、うわっ!!」


壮吾が勢いよく自転車をこぐと、それだけで自転車から落ちそうになった。


わーわー騒ぐ私と、それを面白がって笑う壮吾。


通学途中の生徒が次々と私達を振り返り、目を丸め、呆然としていた。